禁止されている解雇

2014年2月15日

NICHIGO PRESS 2月号 労働・雇用法弁護士 勝田順子の職場にまつわる法律の話

第6回 禁止されている解雇

 

 前号でご紹介したオーストラリアでの解雇方法に引き続き、今回は法律で禁止されている解雇、違法解雇(unlawful termination)と違約解雇(wrongful dismissal)、そして不当解雇(unfair dismissal)をご紹介します。

 

1. 違法解雇(フェアワーク法第772条)

 

次の理由で従業員を解雇することはフェアワーク法により禁止されており、違法解雇です。

 

(i)性別、人種、年齢、身体的特徴や障害・知的障害、宗教、信条、婚姻関係、家族構成や介護者としての責任
(ii)労働組合への加入・非加入や組合員としての活動
(iii)病気やケガのための一時的休職
(iv)産休や育休の取得

 

例え試用期間中であっても、上記の理由で解雇することは違法です。また、解雇理由をカモフラージュするために解雇する従業員にほかの理由を告げたとしても、状況証拠で違法解雇が立証されることもあります。ただし、(i)については、職務を遂行する障害になる場合に限り、これらを理由に解雇することができます。

 

2.違約解雇

 

 雇用契約は雇用主と従業員の合意によって成り立つ「契約」です(当連載第1回を参照)。これは、雇用契約終了の1つの形である「解雇」も契約内容にのっとって行われる必要があるということです。雇用契約で取り決めた手続きを順守していなかったり、解雇する権利を雇用者が持っていなかったりする状況で解雇すると違約解雇となります。これら違約解雇には、以下のようなものがあります。

 

(i)雇用契約書で定めた解雇通知期間を守っていない
(ii)一定期間雇用する条件の従業員を期間の途中で解雇した
(iii)契約書で事前に警告していない不適切行為を理由に解雇した
(iv)従業員との信頼関係を失う行為を雇用主が取ったために、結果的に従業員の辞職を促すような行為

 

 ビジネスが必要な時に迅速に、違約解雇のリスクなくして解雇するには、雇用契約書や就業規則に「いつ雇用主は従業員をどのように解雇できるのか」を明記しておくことが一番の対策になります。

 

3.不当解雇(フェアワーク法第385条)

 

 契約内容にのっとって解雇しても、その解雇が過酷(harsh)か不条理(unjust)、不当(unreasonable)であり、その解雇が正当な整理解雇ではない場合は不当解雇になります。例えば、契約書に「社内でセクハラをしたら即日解雇します」と書いている場合でも、本人への事情聴取を行わず、疑うに足る証拠がないままに解雇すると不当解雇になります。この「harshかunjust、またはunreasonable」になる基準に関しては多くの判例があり、次のような要素が総合的に判断されます。

 

• 解雇の理由を解雇される従業員に通知したか
• 雇用主側が通知したその理由について、従業員が釈明する機会を十分に与えたか
• 従業員の作業能力の低さや不適切行為は解雇するに足る多大な問題であったか
• 解雇の通知や話し合いの場に従業員をそばでサポートする者を連れてくることを拒否しなかったか
• 解雇の理由が作業能力にある場合は、その作業能力が要求されるレベルに達していないことを解雇通知の前に伝え、能力を伸ばす機会を与えたか
• 解雇するにあたり従業員との信頼関係を保つ努力がなされたか
• 雇用主の事業規模

 

 ただし、不当解雇の訴えをフェアワーク・コミッションに申し立てできる従業員は、次の2つの条件が当てはまる人に限られます。

 

• 同じ雇用主の元で6カ月以上勤務している従業員
• 年俸が12万9,300ドル以下、もしくはアワードの対象となる従業員

 

 従って、勤務して6カ月未満の試用期間中の従業員は不当解雇の申し立てをする資格を持たないので、不当解雇のリスクなく解雇できます。また、従業員が15人以下のビジネスは「Small Business Fair Dismissal Code」が適用になります。こちらについては、ホームページでご紹介していますのでご覧ください。

 

 次回は不当解雇となる実例をいくつかご紹介します。

 

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